Story

開発秘話

NS乳酸菌が生まれるまでの
開発秘話をご紹介します

  • 第1話開発のはじまり
  • 第2話実験農場での実証

開発のはじまり

ある友人が私の研究室に電話を掛けてきました。友人の話によると、彼も「非典」(SARS)に感染して、とても苦しい何日かを過ごしましたが、たまたま日本人の友人からもらった乳酸菌を毎日鼻に入れているうちに、肺炎が治ってしまったということでした。友人は、その乳酸菌のことを調べてほしいと言ってきたのです。

乳酸菌といってもその種類はとても多いので、私の研究室の大学院生である張伝芳氏に渡して、もらった菌の遺伝子解析をしてもらいました。実験の結果、それは、発酵乳酸桿菌(Lactobacillus Fermentum)と糞腸球菌(Enterococcus faecalis)の2種類の乳酸菌が混ざったものだということが分かりました。

ちょうどその時、隣の研究所に勤務する人がSARSに感染した疑いが出てしまいました。感染の拡散を防ぐために、私達も研究所から外に出られなくなってしまったのです。期せずして充分な時間ができたので、私はそれからおよそ1週間、インターネットなどで乳酸菌のことを調べてみました。その中で見つけたアメリカの雑誌に発表された論文はとても興味深いもので、友人の言ったことは可能性があると考えるようになりました。

遺伝子の世界には、ハーディ・ワインバーグ平衡という理論があります。これは、数学者と生命学者が同時に見つけだしたバランスですが、遺伝的な病気のある人をわざわざ結婚させたり、逆に結婚を禁止したりしないで、普通の人と同じように結婚し、子供をつくったら、何百年、何千年でも、遺伝子が原因で病気になる人の確率は変わらないというものです。この事実があっても、現実に多くの人が病気になっているのです。私は、遺伝子の研究に行き詰まりを感じていました。そうした時に、乳酸菌に出会ったのです。

それをきっかけにして、乳酸菌に関する論文を千本以上読むと、人間はこのような菌と共生共存すると、病気になりにくくなるのではないかという仮説を持ち始めました。

そして、SARSが一番猛威を振るっていた2003年の春先、私の乳酸菌の研究がスタートしたのです。

SARSをきっかけにして始まった私の乳酸菌研究は、まず世界中の論文を読むことから始まり、次いで乳酸菌の原種を採取して、単菌ごとの機能や効果効能を調べることでした。

すぐれた乳酸菌を抽出する乳酸菌の研究の中で一番大事なことは、言うまでもなく優れた菌を発掘することです。

私は、特に遊牧民の漬物の中から菌を選んでいきました。漬物は雑菌が多く1種類の菌ではないので、こっちの漬物が美味しい、あっちは美味しくないということになります。美味しさの違いは、菌の種類と割合の問題です。私は、漬物の菌を採取し、分離して、一番消化力のある乳酸菌を探しました。

遊牧民族がつくるヨーグルトとチーズを見ていると、ひとつの発想が浮かび上がりました。

世界に生物技術というものができるまでは、庶民は伝統的な方法で発酵食品をつくるしかありませんでした。そうやって、納豆、醤油、酢、味噌、甘酒、ハム、ソーセージ、及び発酵乳製品など数えられないほどの発酵食品をつくっていました。
種(菌)を入れて発酵させる技術が普及したのは、顕微鏡が発明されてからのことでした。それ以前は、食べ切れずに残ったものを自然発酵した後に、それを種として、次の新しい材料を入れて天然発酵させます。このようにして培養すると、当然、純粋バクテリアで発酵させるということはあり得ません。
そこからひとつのヒントがありました。個々のバクテリアは、自分が対応する栄養分を食べるようです。では、私達の消化道にいる乳酸菌は何を食べたいのか、また何を食べたらよく繁殖するのかと検討したのです。

こうして、動物の遺伝子と農薬が全く検出されない培地をつくり、培養した乳 酸菌の安全性と品質を確かなものにします。

私は、自身の農薬中毒の経験や、生命科学の研究から食の重要性を特に意識する中で、アメリカの有機認証機関で あるQAI (Quality Assurance International)の検査官にもなっています。安全性については、学者の名誉にかけて、0.00001%のリスクも犯さないつもりです。

「灯台もと暗し」といいますか、これらモンゴルの大草原から採取した菌の遺伝子を 特定し、種類を調べ、その効果を実験してみると、すごいことがわかってきたのです。私の故郷にはとんでもない宝物があったのです。

私達は、こうして選び取った高機能な乳酸菌の純菌100種類程をストックしています。そして、この乳酸菌群を「NS乳酸菌」と総称しています。共生世界の新しい太陽(New Sun)になってほしいとの願いから、また、「New Sun」の発音は日本の「乳酸」に近く、私の名字「金」の発音は、「菌」と同じであることから名付けました。

実験農場での実証

豚舎は全く臭いがしなくなった

養豚場にセーターを着て入ると、2回洗濯しても匂いがとれないのですが、我々の実験場にセーターで入っても、誰も気付かないほど匂いがつきません。特に冬場は、保温のために豚舎の窓を閉めたほうがいいのですが、現実は酸素が足りなくなるため、窓を開けて臭いを外に出さないと豚が中毒になってしまいます。でも、私達の実験豚舎では、窓を閉めても大丈夫でした。シャッターを下ろして、光が入らない豚舎で、豚は食べたらすぐに寝て、また食べてというのを繰り返し、成長が早くて無駄がありません。

2~3週間で豚の病気が治った

こういう基本的な前提のもとに、まずは一番病気の多い養豚場で実験をすることにしました。適当な養豚場を探した結果、広州の花都と清遠のふたつの農場で始めることにしました。あえて近代的な設備の整っていない、汚れの酷い農場を選んだのです。そこは1キロメートル離れた場所からでも、養豚場があることが分かるほど臭いが酷いところでした。

当初、その農場の主人はなかなか私達の実験を許可してくれませんでした。しかし、その豚舎の病気の死亡率が70%にも及んでいて、主人も手の施しようがなかったので、やがて仕方なく私達の申し出を受け入れてくれました。 それから、何カ月間かかけて実験を繰り返しました。実験は大成功でした。

まず、わずか2~3週間で病気が治りだしたのです。最終的には、豚の死亡率は自然死亡率といえる5%まで低下させることが出来ました。加えて、病気が治るだけでなく、その豚の肉を食べると、皆一様に驚きました。これまでの肉よりはるかに美味しかったのです。

この豚糞を使ってエビや魚の養殖をすると、やはり水を汚染することなく、水産動物の成長が早くて病気にもならなかった

私達が実験した豚舎は全く臭いがしなくなったので、近所の農家達は、豚糞を買いたいと言ってきました。私達は当初、糞尿処理場をつくろうとしていたのです。農家達はエビや魚の養殖のエサにするために、毎日毎日トラクターで豚糞を買いに来て、処理場をつくるどころかかえって足りなくなるほどでした。この豚糞を使ってエビや魚の養殖をすると、やはり水を汚染することなく、水産動物の成長が早くて病気にもならなかったのです。

豚同士で喧嘩をすることがなくなった

豚同士で喧嘩をすることもなく、じっとしています。

中国での養豚実験では、同じ母豚から生まれた一二頭の子豚を二つに分けて、六頭にはNS乳酸菌を与え、六頭には与えずに飼育しました。その結果、前者はとてもおとなしく、人間と親しんでくれています。後者は人が近づくと逃げるようにします。また、子豚どうしケンカをするので、生傷があちこちにあります。

私たちが農場でNS乳酸菌の実験を始めて一年たったころ、日本の農林水産省に当たる中国農業部の専門家たちが視察に来ました。そして成果に驚き、報告書を作成して国内外に発信してくれました。

おかげでいまでは、中国科学院の試験農場をはじめ多くの養豚場で、すべての薬や 抗生物質を禁止し、NS乳酸菌による共生性の発酵エサを与えています。またエサだ けでなく、飲み水に混ぜたり、清掃に使ったりすれば、においもなくなり豚も喜びます。

肉質が良くなった

食品研究センターで測定した数値では、私達の実験農場の豚肉は、タンパク 質は日本の通常の豚肉が10.05%であるのに対して、その2倍以上の21.68%でした。美味しさをつくる天然化学物質であるイノシン酸は、日本の標準豚肉が0・009%に対して、鹿児島の黒豚は0.04%。私たちの豚肉は、その黒豚と比べてもはるかに高い数値で0.17%でした。

エサを大量に節約できる

従来50%の吸収力が70%まで吸収され、無駄な部分が少なくなります。牛、羊、うさぎ等を飼育する場合に、植物性乳酸菌を入れると、従来50%の吸収力が70%まで吸収され、無駄な部分が少なくなります。つまり、エサを大量に節約できることになります。実際に飼育用として使ってみて有効なことが分かってきました。

豚肉が美味しくなり、内臓のかたちも綺麗

豚肉が美味しくなり、内臓のかたちも綺麗だということも報告しました。

豚の死亡率を下げる

豚の研究を続けて、病気については5年間データをとってきました。中国の獣医学研究所と、地方の人民政府の役人達がその結果をみて、はっきりと乳酸菌の効果を認めました。隣の養豚場で伝染病が蔓延していても、乳酸菌を使った養豚場では全くない。同じ村の中で、200メートル離れた養豚場で70%死んでも、こちらの養豚場はわずか5%、自然死亡率を保っています。またはウイルスが検出されても発症しない。そういう実例は、共生共存の証拠になります。また、豚の実験は大きな集団で行うので、そのデータはとても確度が高いものになります。

豚の飼育で乳酸菌を使う場合、エサに混ぜて発酵して食べさせる方法と、それ に加えて、乳酸菌を水で薄めて豚舎に噴霧する方法があります。エサのみの場合 は、死亡率は10%まで低下させられましたが、噴霧を加えるとさらに下がって、 3~5%になります。5%で、動物としては自然死亡率になるので、病気は完全 に予防できた状態ということができます。

なぜ、乳酸菌の液体を噴霧すると病気を抑えることができるかを研究しまし た。ウイルスや病原菌を抑えるのは、ペプチドなのか有機酸なのかが分かりません。

農薬や化学肥料の成分は検出されなくなる

農薬や科学肥料が含まれていても、発酵の過程で、毒性のもととなるリンや硫黄、窒素などは乳 酸菌のエサとなり、農薬や化学肥料の成分は検出されなくなります。

一切抗生物質や殺菌剤・制菌剤などの化学物質を使わなくても、養豚ができることを証明しました。

私たちは2003年から、NS乳酸菌の発想元となった乳酸菌で豚の病気を治す実験を始めて、いい結果が出るまで1年間に2代の豚を観察しました。その間、 抗生物質をゼロにしても何も問題がありませんでした。その後NS乳酸菌の整理 と実験の証明をさらに5年続けて、10代以上の豚を出荷して一切抗生物質や殺菌剤・制菌剤などの化学物質を使わなくても、養豚ができることを証明しました。

NS乳酸菌を食べさせた豚と食べさせない豚とを比較したら、体重が15%違いました。

フィリピンのネグロス島で養豚している人は、NS乳酸菌をこんなふうに使っています。以下は共生性の事例として理解できます。

ココナッツミルクを生で絞って二リットルぐらいのペットボトルに入れ、そのなかに養豚用のNS乳酸菌をスプーンで一~二杯入れて、よく振っておきます。数時間でボトルが破裂するくらいに膨らみます。若い菌ですから、増殖が活発です。

それをエサに混ぜて食べさせています。NS乳酸菌を食べさせた豚と食べさせない豚とを比較したら、体重が15%違いました。また、豚舎のにおいもなくなりました。これが共生性の好循環です。体重が増えたのは、いわゆる肥満になったというのではなく、後述しますが、筋肉質の豚になったことを意味しています。

魚やエビの養殖に使えば、抗生物質は使わなくてすみます。

牛や豚の場合は口蹄疫などウイルス性疾患の予防、治療にもなります。養鶏場では、鶏インフルエンザの予防になります。

抗生性のNS乳酸菌は、人類の安全な抗生物質として、これから大いに応用されることが期待されます。

血圧調整

硫化水素とアンモニアが高ければ血圧も高くなります。血圧の調節には、身体のなかで毒性ガスをつくる悪玉菌を抑制することが重要です。 もう一つわかったことがあります。NS乳酸菌を与えながら動物を育てると、肝臓と心臓が非常に小さくなることです。

豚の場合、ふつうの育て方だと、100キロの豚で、心臓の大きさは平均350グラムくらいありますが、NS乳酸菌を与えながら育てると、同じ体重の豚で280~300グラムになります。50グラムから70グラム小さくなります。

ニワトリでも実験しましたが、豚と同じ傾向が見られました。心臓が小さくなるということは、生理的に判断すれば、心臓にそれだけ負担がかかっていないということで、血圧のためには好ましいことです。

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